住みなれた我が家を手放さなくてはいけない状況になったお客様が、
競売で新しい住まいを取得するまで― 会員様と共に歩んだ2年間です
2008年9月中旬、当社に物件売却のご相談がありました。場所は東区香椎、私の地元です。物件の査定も兼ねて、お伺いさせていただきました。
ご依頼いただいたのは、実直そうな40代後半のT様。物件はJR香椎神宮駅から徒歩6分の好立地、建物は木造戸建て分譲会社:なかやしきによる木造注文住宅で、新築時の価格は4,500万円でした。南向きの住まいは日当りも良好、しかし家の中は荷物も少なく、どこか寂しげです。
お話を伺うと、1年以上前、T様はいろいろなご事情が重なり転職をすることになりました。少し収入がダウンしたため、ローンの支払いを考えて、思い切ってお住まいを売却しようと決心されました。そんな苦しい中、さらにご事情が重なり、奥様と離婚をされることに…。ご家族を大事にされていたT様にとっては、それはつらいことでした。
とにかくお住まいを売却しなくてはいけません。大手仲介不動産会社に売却を依頼、最初の物件査定では、それなりの金額が提示され『それくらいの価格で売れれば、借金も残らないので安心。』そう思っていました。しかしその後、売却に向けての動きはなく、月日だけが過ぎていきます。T様がどうなっているのか相談をすると、販売価格を下げること提案してきます。
何度か価格の見直しをしましたが、なかなか売却までつながりません。ローンの支払いも苦しくなってきます。真面目なT様は、一生懸命支払いを続けますがそろそろ限界が近づいてきました。早く売却をしないと、支払いが滞り競売になってしまう…、気持ちも焦ります。
八方塞に感じる中、ふと見たホームページ、それが堤エステートのホームページでした。
『ここに相談してみようか…』そんな気持ちでお問合せをいただいたT様。私が伺った時は、ご家族は別の場所に移転するため、引越しの準備中だったのです。ポツリポツリと経緯と事情をご説明いただいくT様の様子を見て、私は居たたまれなくなりました。いろいろご事情はあるかもしれませんが、ご家族のために一生懸命なT様の人柄は、話しただけで分かります。
転職された仕事先でも、実直な人柄や仕事ぶりが評価されているご様子。しかし、心は深く傷ついていらっしゃいます。私は同じ男として、藁をもつかむ気持ちでお問合せをいただいた不動産業者として、この人のためになんとかしなくては!!!と強く思ったのです。
まずは、売却のための戦略を見直します。売却依頼を受けた大手仲介不動産会社の問題点は、ホームページでも記載しておりますが早急な売却を実現させるには、近隣で販売されている不動産の価格を
視野に入れながら、査定をしなくてはいけません。
物件はしっかりしていますが、築10年経過していたため、見栄えをよくするためにも最低限の手直しと美装、そして植木の刈り込みなどが必要と感じました。そこで当社の取引業者に安価で作業を依頼をしました。
コストをかけずに物件を引き立たせるために行った作業 | ||
・室内の美装 | ・室内の補修 | ・植木の刈り込み |
このような臨機応変な対応は、予算が限られている大手不動産会社で はなかなか出来ないと思われます・・・ |
そして、適正な金額で価格を設定。当初の目論見では、積極的に広告活動を行うことで、スムーズに売却に至ると思っていました。
真面目で実直なT様は、最初の印象どおりの方でした。しかしご家族も出て行かれ、広い家にお一人で住まれている様子はとても寂しそうで、心は沈んでいるようでした。私は訪問やお電話で、こまめにコミュニケーションをとるようにしていました。そうでないといけないような気がしたのです。
ある日、お電話してもお電話が不在になります。その後、何度電話をしてもつながりません。『まさか…』よからぬことを想像する私。いつもならすぐお電話と返してくれるのに一向に電話がかかってきません。不安は募ります。夜遅くにかけても、電話はつながりません。翌日、すぐにお住まいに行ってみると…、T様はご在宅でした。
私の安堵した様子を見て、キョトンとされるT様。どうやらお電話の調子が悪く、つながっていなかった模様。最悪のことを想定していた私としては、安心したのと同時に、肩の力が抜けたような気分になりました。
近隣に販売物件が少ないため、当初、売却はスムーズに進むと思っていました。しかし、サブプライム問題に端を発した不況の影響を受け、なかなか成約まで至りません。一生懸命、黙々と返済を続けているT様の様子を見て、焦る私…。
T様の顔を思い浮かべながら、チラシ、住宅情報誌、インターネット、新聞などあらゆるメディアに広告費をつぎ込み、思いつく限りの販売活動を行いました。なぜスムーズに事が進まないのか、検証も重ねました。T様ともコンスタントにコミュニケーションを取り、現状を報告しますが、なかなかいい報告が出来ず、私も悩んでいました。そんな中、T様は『堤さんを信頼していますので、大丈夫です。』と言ってくれます。
ますます『頑張らなくては!!』と思ったものです。
そして年も明けて1月末。遂に、購入をしてくれるお客様に出会いました!!案内の際、私は渾身の営業を行いました。値交渉が入りましたが、あまり価格を下げることはできません。事情を説明し、買主さんにも納得のいく金額で交渉は成立しました。
T様に成約報告をすると、安堵したご様子で『本当にありがとうございます。黙っていましたが、あともう少しで支払いが限界で…。もし堤さんと出会っていなかったら…。』と言われました。私に気をつかって、言われなかったようです。本当に売却が決まり、ホッとしました。
契約は2月初旬に滞りなく終わり、住宅ローンの承認も出ました。お引渡しの前に、T様のお住まいを探さなくてはいけません。T様のご希望は、お子様と定期的に会うために、ご希望の場所が決まっていました。賃貸で借りることにしたので、いくつか物件をピックアップし、家賃等も業者に交渉して、無事に物件も決まりました。この頃には、T様も不安が一つ解消されたためか、表情も明るくお元気になられました。
私はこのころから、将来的に利便性の良い場所に、T様にピッタリなお住まいを取得した方が良いと思い始めていました。勤続年数や所得、年齢を考えると、住宅ローンも組むことができます。なにより、T様が苦しいながら、ローンの返済を一度も遅れることなくきちんと返済していた真面目な人を見て、この人のためにもう一度ご自身の資産を持ってもらおうと漠然と思ったのです。予算は限られます、そのためには市場より安く購入する必要があります。競売を利用して取得すると、家賃を払い続けるよりも、キャッシュフローが良くなるのです。
引越し業者も紹介をし、無事新しい住まいで生活を始められたT様。新居でのご様子を伺うためにお宅にお邪魔をしました。そこで、雑談を交えながら、私の業務である競売不動産の話をするとT様が「競売物件って安いんですね。」と興味を持たれました。
私はうれしくなりました。決してここまでの道のりは平坦ではなく家族とも別れ、しょげかえっていたT様。そのT様が、新しい生活を始められ、私の競売不動産の話に興味を示すほど元気になられたことが、とてもうれしかったのです。
『じゃぁTさん、次は競売でTさんにピッタリな物件を購入しましよう!』
最初T様は、半信半疑でした。住宅ローンの支払いが苦しかった自分が、また物件を取得できる?そんな感じでした